1.設立趣意
2002年以降の20年間で、警察が認知した刑法犯数は減少を続けています。しかし、犯罪が根絶されたわけではなく、むしろ近年は不特定多数の被害者を生じさせる無差別殺傷事件等凶悪犯罪の増加傾向が懸念されています。このことは、「いつ、どこで、だれが被害者になるか分からない」という危機的な状況を示しています。
犯罪は多種多様で、そこにはそれまでの人生と家族の歩みを突然に遮断させられた多くの被害者等(被害を受けた本人とその家族、遺族)が存在します。また、被害は、犯罪事実のみならず、それぞれの犯行態様や被害者等の環境等によって多岐に渡り、長く続き、二次・三次被害を受けることもあるため、適切な支援・援助・擁護の施策を講じなければ、被害者等の社会生活回復への道のりは険しいものと云わざるをえません。
これに対して2004年の「犯罪被害者等基本法」制定と、それに伴う「基本計画」の策定により、犯罪被害者等のための制度改正や施策が推進されてきました。札幌市においても「札幌市安全・安心まちづくり条例」に基づく種々の施策が実施されていることは市民生活の安心・安全を高めています。これらの施策の推進は、犯罪被害者等の窮状と実情を社会に知らせることでもあり、それによって社会の意識変革をもたらす点で犯罪抑止にも直結しています。
それでも、犯罪が発生する以上は、社会状況に即した被害者等への支援・援助の施策は不断に推進されるべきであり、地域での取り組みが重要性を増していることからも民間(市民)レベルの活動を拡充することが求められています。
そこでこの度、「非営利活動法人 さっぽろ犯罪被害者等援助センター」を設立し、札幌市を拠点に、主に犯罪被害者等の被害からの回復のための―迅速・無償・公正―で、切れ目のない活動を行うことに致しました。そのために以下の具体的な活動を行います。
2.具体的な活動
(1)犯罪被害者等の社会生活回復のため、被害発生後のアウトリーチ援助である「危機介入(危機応答)」を実践し、切れ目のない継続的な援助活動を行います。
(2)札幌市における被害者のための「総合ワンストップ窓口」の設置と支援体制(組織・システム)の構築、及びそれらの活動を保証するための「犯罪被害者支援条例」の制定を働きかけます。
(3)「積み残されている課題」として、《心神喪失(責任無能力)による不起訴事件の被害者に対する医療観察法における情報提供の在り方の改善》、《未成年の被害者、及び、被害者の兄弟姉妹等を援助・擁護する法制度の創設》、《被害補償制度の創設》、《幼児を対象にした性犯罪者に関する情報開示》等の解決に向けて尽力します。
(4)そのために関係機関と連携して調査、研究を進め、成果をホームページ等を通じて発表して行きます。
(5)前項の活動が有効なものとしての信頼を醸成し、地域社会での犯罪被害者等への理解促進を図るために、講演会等の広報活動を行います。
(6)これらの活動を通じてSDGs(3.すべての人に健康と福祉を、5.ジェンダー平等を実現しよう、10.人や国の不平等をなくそう、16.平和と公正をすべての 人に、17.パートナーシップで目標を達成しよう)を目指します。
このような民間組織の活動は、犯罪被害者等の総合的援助に留まらず、犯罪に限らないあらゆる被害者の支援、援助の拡充や犯罪抑止につながり、安全 で公正な社会の根幹を強固にし、市民の安全保障に寄与すると確信します。
2022年4月15日
「特定非営利活動法人 さっぽろ犯罪被害者等援助センター」設立発起人会
設立発起人代表 木村邦弘